先生、こんにちは。
茨木英光です。
前回は顔面神経麻痺の見分け方についてお話いたしました。
・ 片側の目と口の両方が垂れ下がっている麻痺は「安全」
・ 片側の口だけが垂れ下がっている麻痺は「要注意」
覚えていますでしょうか。
今日は安全な麻痺である下位運動ニューロン障害、目と口が下垂した場合の調整法です。
A 茎乳突孔から下顎角の後内側の調整
- 患者は仰臥位となり、術者は4指で下顎角の後方(えらの後ろ)を持ち上げるようにコンタクトします。
- 前方(天井方向)に圧を維持しながら「口をゆっくりと開けましょう」と指示をします。
口が開く動きに合わせて、術者は自身の指を前方下方へと動かして患者の口が開きやすくしていきます。
この口が開きにくい状態が、下顎角の後ろで顔面神経の絞扼を起こしているのです。 - 「ゆっくりと口を閉じて行きましょう」と指示をします。
口を閉じる動きに合わせて、術者の指は上方、後方へと動かしていきます。
口を閉じる動きに合わせて動いていく感じです。 - この操作を2・3回繰り返します。
繰り返して行く中で、術者の指が下顎角の奥へと入りやすくなっていきます。
顎を少し上げて行うとやりやすくなります。
B 大頬骨筋の調整
- 患者の口にティッシュを当てて、術者は左右の口角を母指と示指でつまむようにコンタクトをします。
患側に術者の下方手示指が来るようにします。(右が患側なら、左側に立って、左手でコンタクト)
上方手である右手は患者の額に軽く触れておきます。 - 「口を開けて行きましょう」と指示をします。
開口の動きに合わせて、術者は、後方(床方向)に圧をかけて、大頬骨筋と上顎骨との間に指をすべらせていきます。 - 「口を半分くらい閉じましょう」と指示をします。
全部閉めないのは顔の筋肉に力が入らないようにするためです。
常に顔の筋肉が緩んでいる状態で操作を行っていきます。 - この操作を2・3回行います。
繰り返して行く中で、大頬骨筋の奥へと指を割り込ませていきます。
C 上部表情筋の調整
- 患者の目にティッシュを当てて、術者は上方に立ちます。
- 術者は示指と中指を揃えて、患者のまぶたの上から、眼球と骨との間のくぼんだ所に手を触れます。
(眼球そのものへのコンタクトではないことに注意してください。) - 手を1cmほどの幅で軽く動かしながら、少しずつ眼窩へと指を割り込ませていきます。
目の奥へと指を入れようとすると痛みが出て危険ですが、横に動かしながらだと、痛みなく入って行くことができます。
これはいきなり患者様に使用せずに、十分練習を行ってから施術してください。 - 「口を開けましょうと指示します」
口を開ける動きに合わせて、術者の指を内側(涙腺の方)へと動かします。
指がスッと中に入って行くことがわかります。
具体的に言うと、眼瞼挙上筋と上直筋の間に手を割り込ませていきます。
しっかりとイメージがつくまで解剖学書で学んでください。 - 口を閉じる際に、内側に持っていった手を真ん中まで戻して、ゆっくりと離します。
以上が顔面神経麻痺の施術の方法です。
大事なことは、テクニックから習得していくのではなく、解剖学的に顔面神経の走行を理解することから始めることです。
その後で絞扼を取るにはどうすればいいのか考えて行くのです。
どうしてもテクニックを知りたくなるのは当然なのですが、それを自分のものとして、一生のテクニックとするためには腑に落ちるまで理解を深めて行くことが大切です。
ぜひテクニックを覚えただけで満足するのではなく、脳神経全般について理解を深めて行っていただきたいと思います。
そのためにも、興味をもって学んでいただけるような情報をこれからも発信していきたいと思っています。
ありがとうございました。
茨木英光