手技によるリハビリとは
手技は古来から行われてきた、道具や薬などを一切活用せずに素手だけで行う療法や療術の
ことを指しています。
「触る」「叩く」「揉む」「擦る」「押す」などといった手技によって、多動的に動かした
り、運動を促したりしながら組織に対して良い影響を与えるものです。
痛みやコリなどに対して、筋肉や関節の緊張を取り除き、調整を行うことによって、不快感
を緩和させる作用があります。
リハビリの手段として活用されている手技療法
手技で行う療法であることから、神経に対して刺激を与えることができ、血流を促進させる
ことから自律神経の働きを活発にさせることも可能です。
そのため痛みやコリの緩和だけではなく、体全体の免疫力を高めるために有効な手段である
と考えられているのです。
そのため近年、リハビリテーションの分野において、手技療法が幅広く行われることが多く
なりました。
リハビリテーションは、病気やケガ、障害、老化などによって身体機能を低下させてしまっ
た人に対して、改善を目指すことが目的であると言えます。
しかし実際には、身体が改善しないまま社会生活を送っていたり、病気は改善したのに身体
機能が衰えてしまって介護が必要になったというケースが多いのではないでしょうか。
これは病院機能のデメリットと言えるかもしれませんが、社会生活を営むことを治療のゴー
ルとしていないことにあるのでしょう。
そのため手技によるリハビリテーションはとても注目されており、今後さらにニーズは高ま
ってくると考えられています。
手技によるリハビリによって身体に与える影響
手技療法は身体に対して直接的に揉んだり押したりすることによって刺激を与えていきます
から、身体全体にさまざまな作用を与えることができます。
もちろん痛みやコリの緩和や改善を目指すことができます。
症状の原因となっている部位を見つけることによって、筋肉や関節などに現れている緊張を
解きほぐしすことができるからです。
筋肉中には血流量が増えることになりますので代謝が高まり、筋肉の働きである筋収縮力が
改善します。
また神経に刺激を与えることによって神経が興奮し運動パフォーマンスを高めることができ
ますし、反対に神経を落ち着かせることによってリラックス効果を得ることもできます。
痛みやコリの部位だけではなく、身体全体の血流を高めることが可能です。
リンパや脳脊髄液、体液などの循環を促進させることにも繋がりますから、代謝を促進させ
て痛みやコリ、疲労などの回復を高めることにも繋がります。
このように手技をリハビリテーションの一環としてとらえると、とても有効な治療法である
ことが理解できるのではないでしょうか。
手技によるリハビリの種類や技法
手技によるリハビリテーションには、さまざまな種類の治療法があり、その技法にも特徴が
あります。
病院においては理学療法士や作業療法士などによって手技を活用したリハビリテーションが
行われていますし、その他にもあん摩やマッサージ、柔道整復、整体、カイロプラクティックなど数多くの療法が存在します。
あん摩やマッサージにおいては「触る」「揉む」「擦る」「押す」などといった手技によっ
て、身体本来が持っている機能を改善させる療法であると言えます。
柔道整復は「接骨」「ほねつぎ」などと呼ばれることもあり、日本の伝統医療として受け継
がれてきたものです。
そのほかにも整体やカイロプラクティック、リフレクソロジーなどと呼ばれる民間療法がさ
まざまあり、手技によって骨格や脊髄の調整、マッサージなどが行われています。
これらの手技療法は施術者や治療院によっても異なる技法を用いていることが多くあり、さ
まざまな理論をベースにしてリハビリテーションに取り組まれていると言えます。
骨折後における手技によるリハビリの重要性
骨折後の手技療法はとても大事であると考えられています。
リハビリテーションを行わないまま日常生活に戻ってしまうことで、ぎこちなさが残ってし
まったり、痛みが残ってしまったり、元通りの状態に戻らないことが多いからです。
骨折後の手技によるリハビリが大切な理由とは
一般の病院では、骨折に対する治療は行われるものの、骨折後のリハビリテーションが提供
されないということが珍しいことではありません。
特に急性期治療に特化した病院では、そのような傾向が見られています。
しかし骨折部位は治癒しているとしても、可動域制限がみられたり、周辺筋肉や関節に対する損傷が現れることも珍しいことではないのです。
場合によっては、骨折によって体全体のバランスが崩れてしまい、骨折とは別の部位から痛みやコリなどが生じ、慢性化してしまう可能性があります。
これらの症状を総称して「後遺症」と呼ばれますが、後遺症を残さないようにするには、骨折後の早い段階において手技によるリハビリテーションに取り組むことが重要になります。
関節や筋肉などのバランスに着目して、稼働域訓練をはじめとしてストレッチや筋肉強化な
どの手技に取り組むことによって、後遺症を残さずに元通りに改善させることが期待できます。
骨折後に手技によるリハビリが可能な期間
一般的には骨折後してから病院での治療を行い、その後症状が固定するまでの期間は150日程度であると考えられています。
あくまで医学的データによるものですが、骨折して手術をしたのち、この150日を目安にしてできる限り早期に手技療法に取り組む必要があります。
しかし急性期病院の場合、入院日制限などの関係から、多くは骨折後のリハビリテーションには取り組まれておらず、希望するならば他の病院に転院するなどの措置が取られます。
このような状況の中で転院できない患者も多く、リハビリテーションが行われないまま社会生活に戻ることも少なくないのです。
症状固定がみられる150日までの間に、関節が固まってしまって稼働域に制限がみられたり
、動かさないことで筋肉量が減ってしまったり、骨折による損傷などにより関節に歪みが生
じるようなことは珍しいことではありません。
手技によるリハビリテーションは、このような状況から回復させ、痛みやコリなどを慢性化
させずに回復させる、有効な方法であると考えられているのです。