頭・首の手技

【茨木英光】神経の流れを良くするために

先生、こんにちは。
茨木英光です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

手技療法では「神経の流れを良くする」という言葉がよく使われます。
今日はその具体的な方法について考えてみたいと思います。

1 背骨を矯正しても末梢神経の流れは改善しない

カイロプラクティックを学び初めた頃は、背骨の歪みを整えたら、全身の神経の流れが良くなると思っていました。
始めにそのように教わったからです。

でも臨床に携わるようになって、実際に手のしびれの患者に対して首の調整を行っても一向に良くなりませんでした。

しかし手のしびれる箇所を治療をすることで、しびれや震えは改善していきました。

背骨万能説と言いますか、どこか1箇所を調整すれば全身が整うという考え方は自分の中から無くなっていき、患部そのものを見るようになっていきました。

「木を見て森を見ず」という言葉が手技療法ではよく使われます。
患部ばかりに気を取られずに、もっと体全体を見るようにという意味で使われます。

でも僕は患部にこだわります。
腰が痛ければ腰を見ます。

「山火事も1本の木から始まる」
どこが出火の原因だったのか、僕は追求します。

「ひどいぎっくり腰だから今日は患部は触れません」なんて絶対に言いません。
初回から腰を触って治します。

どんな急性期の症状であれ、初回から患部を触れる技術が必要なのです。

2 デルマトームは2種類ある

デルマトームは皮膚分節とも言われます。
例えば第6頸神経に問題が生じたら、手の親指あたりに神経障害が出るというもので、体に等高線が描かれたような図です。

よく見るデルマトームの図は神経根性のもので、母指のしびれでも肘から先がしびれるという図になっています。
もう一つのデルマトームの図は末梢神経性のもので、手根管で神経障害が起こると、手首から先がしびれるという図になっています。

手のしびれを訴える患者さんの話を聞くとどうでしょうか。

「指先がしびれます」と仰る方がほとんどで、「肘から指先までしびれます」と訴える人はまずいません。
なので神経根性のしびれを訴える人は、ほとんどいないのです。

ヘルニアが原因で手がしびれるのなら、首が痛くてたまらないのです。
そしてまともに首が動かせません。

なのでこのような方は「首が痛いです。そして手もしびれます。」と訴えます。

そして更に悪化すると手の運動麻痺を伴うようになって、手が思うように動かせなくなってしまいます。
単なる指先のしびれとは全く違うことが分かると思います。

3 神経の絞扼はほとんど抹消で起こっている

指先のしびれの殆どが末梢性であるならば、それはどこで絞扼が起こっているのか。
最も多く障害が起こるのは、やはり手根管です。

調理やハンマーを持つ作業とか、仕事でよく手を使う方に起こります。

そのような方に対して手根管を広げる施術を行うと手のしびれや震えはその場で止まります。

その次に前腕の正中神経の線維の可動性を付けて行きます。
正中神経は橈骨と尺骨の間を通っています。
そこを詳しく触診すると、正中神経の線維のブニョブニョとした感触が分かります。

正中神経は肘の上部で上腕筋の下を通っています。
ここが第2の絞扼箇所となります。

肘を怪我した方や、骨折でギプスで手を吊っていた方に起こりやすい絞扼です。
ここも肘を伸ばすようにして正中神経の可動性を付けていきます。

このように、手足の神経の問題は、背骨に起因するものはあまりなく、実際はしびれる患部そのもので絞扼が起こっているものがほとんどなのです。

腰や首などの神経根性のしびれであれば、まず「腰が痛い、首が動かない」そのようなことを訴えます。

「一箇所を治療すれば全身すべて解決する」というようなおいしいテクニックを追い求めるのではなく、患者の訴えを正確に判別できる知識と、その場で改善できる技量を身に着けていくことが何より大切だと思っています。

ありがとうございました。
茨木英光


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