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【茨木英光】顔面神経麻痺の見分け方

先生、こんにちは。
茨木英光です。

今日は第7脳神経である顔面神経の麻痺についてです。

ベル麻痺として有名な疾患で、顔の半分が垂れ下がって麻痺する症状です。

結論から先に申し上げておきますと、
・片側の目と口の両方が垂れ下がっている麻痺は「安全」
・片側の口だけが垂れ下がっている麻痺は「要注意」
ということになります。

口だけが垂れ下がっている方が症状が軽いと思ってしまいそうになりますが実は逆なんです。
目と口の両方が垂れ下がっている方が安心な麻痺なんです。

始めにざっくりと理解していただきたいことは上位表情筋、つまり目の辺りの筋肉は両側性支配となっています。

左の大脳から発せられる運動刺激は、右目のウインク、左のウインクそれぞれの動作ができる左右両方の目の周りの筋肉を支配しているということです。

混同してはいけないのは眼球をキョロキョロと動かす筋肉はⅢ動眼神経、Ⅳ滑車神経、Ⅵ外転神経なので顔面神経支配ではないことにご注意ください。

一方ニコッと口角を挙げたりする下部表情筋は、対側のみの支配となっています。
左大脳から発せられる刺激は右の口元のみを動かしているのです。

ここをしっかりと理解しておいてください。

顔面神経の1次運動ニューロンは大脳の運動野から始まって、脳幹にある橋(きょう)にある顔面神経核までとなっています。
ここでシナプスを介して上部表情筋には「両側に」2次ニューロンを出し、下部表情筋には「対側のみ」に2次ニューロンを出しています。

「要注意」の症状である、上位運動ニューロン障害、つまり脳での障害はこの1次運動ニューロンでの障害です。
これは脳梗塞が最も考えられる疾患です。
なので頭痛が伴うことも特徴です。

左の脳梗塞になったとしたら、右の上下表情筋が障害を受けますが右大脳からの正常な刺激が左上部表情筋を動かすことができますので結果として右の下部表情筋、つまり右の口だけが麻痺を起こすのです。

しかし「安全」である下部運動ニューロン障害の場合は頭蓋を出た後の神経絞扼が問題となっているため、上下とも片側の表情筋が絞扼されるのです。

橋を出た2次ニューロンは前庭蝸牛神経と共に内耳道に入っていきます。

Ⅶ顔面神経とⅧ前庭蝸牛神経は並走しているため、顔面神経がヘルペスウイルスに感染すると、前庭蝸牛神経に乗り移ってめまいを起こすことがあります。
そのためヘルペスの薬がめまいに対して効果がある場合があります。

顔面神経は内耳道を出た後は耳の後ろにある茎乳突孔から皮下へと出ていきます。
耳たぶの下の顎のえらの後ろ辺りです。
この辺りの筋肉の硬さが、顔面神経の第1の絞扼箇所となります。

次に顔の表情筋の下へと分布していきます。
口角から頬骨にかけて走行する大頬骨筋の下をくぐり抜けていきます。
ここが第2の絞扼箇所となります。

後は眼輪筋周辺が第3の絞扼箇所となります。

これらの絞扼箇所を解放するようにして顔面神経麻痺を改善していきます。

顔が麻痺している患者様が来院されると術者はどうしていいのか焦ってしまいます顔面神経の走行を理解していると判別の仕方、対処の方法がちゃんと分かるようになってきます。

次回は顔面神経麻痺の調整法についてお話いたします。

ありがとうございました。
茨木英光


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