皆様こんにちは。
今日はテクニックを上達させるコツについて
腰の場合を例にしてお話していきたいと思います。
患者さんに今日始めて触れるとき
ファーストタッチは手の面積を広くして触リます。
しかし指先は触れないでおきます。
そうすると患者さんは安心して術者に体を預けることができます。
この時に「失礼しますね~」と、柔らかい口調で言葉を添えましょう。
あまり硬くなって
「失礼しますっ、失礼しますっっ!」
と連発してしまうと、患者さんに自信のなさが伝わってしまいます。
こちらは治す覚悟で触るのですから、失礼なことは無いのです。
だから自信をもってそっと触れましょう。
触れる場所は、こそばくない箇所が基本です。
骨盤や肩甲骨など、大きい骨の上を手のひら全体で触れましょう。
ファーストタッチができたら、次は母指でベクトルを中へと沈めて行きます。
しかしこれは押圧を強めて行くのとは異なります。
腰であれば椎間関節や椎間板など、自分が標的とする組織を明確にして
そこまでベクトルを到達させていきます。
むしろ貫通して腹部に抜けて行くくらいの透明感のある力と言えば良いでしょうか。
術者の指の力ではなく、肩から指先へと一直線に伸びる力。
「体重でベクトルを患部に伝えていく」というイメージです。
腰椎を母指で触診する時に、椎間関節の構造を知っておかなければなりません。
椎間関節は縦に2つの骨が重なっています。
コーヒー豆のような感じです。
ひとつの豆に縦にすじが走っていて
外側が第5腰椎、内側が第4腰椎の関節突起で構成されています。
そのためひとつのコーヒー豆を触っているようでも、
ちゃんと2つの骨で構成された関節であることを
理解しながら触らなければなりません。
それが分かった上で触診すると、
ベクトルを椎間関節に沈めた時に
左右どちらの関節が異常を起こしているのか、すぐに分かります。
そうすると
「ここが辛いですよね。
関節を元の位置に戻しますから、痛いのは取れますよ。大丈夫ですよ。」
と、治療前から宣言することができます。
それは患者さんが何より言ってほしい言葉です。
根拠の無い励ましを言うのではありません。
ちゃんと解剖学的構造と、
自分の触診技術が合致するから言える言葉なのです。
なので技術よりも前に知識が大切なのです。
手の微妙な動かし方とか、母指のひねり方などは
その後に習得すれば良いことなのです。
どうしても手っ取り早いテクニックに注目が集まりますが
自分の生涯のテクニックとして腑に落とすためには
その技術の意味を解剖学的に理解する必要があるのです。
まとめますと、
・まずは優しく、広く触ろう。心をハグするような感じで。
・解剖学を深く勉強しよう。理論に基づいた技術を発揮できる術者になろう
今日はこの2つを実践してみてください。
長い道のりのようにも見えますが、人を治すことってそんなに甘くはありません。
地道に勉強していくことが一番近道なのです。
まだまだコツがいっぱいありますので
少しずつお伝えしてまいります。
ありがとうございます。
茨木英光