胸郭モビライゼーションとは
胸郭モビライゼーションとは「呼吸理学療法」とも呼ばれ、呼吸リハビリテーションとして理学療法士が実施する治療方法のひとつになります。
慢性閉塞性肺疾患など慢性呼吸不全患者に対して積極的に行われているものであり、胸郭の可動性を高めながら、効率の良い呼吸や肺活量の改善を目的に実施されます。
胸郭は背骨の胸椎12個、肋骨12対、胸骨から構成されている骨格であり、外部から内臓などを保護し、周辺筋肉と強調しながらうまく呼吸ができるようになっています。
私たちは1日に数万回の呼吸をしているといわれます。
そのため呼吸状態が悪いと、たちまち全身状態の悪化に繋がってしまうことが指摘されており、何もそれは呼吸不全の患者だけに該当するものではありません。
特に呼吸が浅いと疲労感が抜けず、倦怠感が慢性になってしまいます。
これは体にしっかりと酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するガス交換が上手くできていないことが原因であり、横隔膜・肋間筋・腹筋群といった呼吸に関する筋肉の働きが悪くなっていることが指摘されています。
自律神経の働きも悪くなってくることから、緊張状態が強くなってしまい、うまく体のストレスを解消させることができないのです。
ついには免疫力まで低下させてしまい、体調不良に陥ってしまうのです。
そのような状態であれば、胸郭モビライゼーションによって周辺筋肉を活発に動かし、胸郭に対してアプローチすることによって呼吸状態を改善させることができます。
胸郭モビライゼーションで改善が期待できる症状について
胸郭モビライゼーションで行われる呼吸リハビリテーションは、薬物治療や酸素吸入などとは違い、体の内側から呼吸状態を改善する治療法のひとつです。
胸郭にアプローチを行い、緊張した周辺筋肉を開放することによって血流が改善され、慢性的な呼吸不全の場合であれば息苦しさが改善されますし、呼吸状態がとても楽になります。
外出などの支援に繋げることもできますから、治療といった観点だけではなく、生活の質を向上させることも可能となります。
呼吸に関する周辺筋肉の動きが改善されますから、痰をうまく排出させることができない高齢者でしたらできるようになることが期待できます。
高齢者に多い肺炎を予防することにも繋がるでしょう。
また呼吸不全ではない場合においても、睡眠状態を改善し、深い眠りにつくことができるようになり、自律神経の動きを活発化させ、免疫力を向上させることが期待できます。
また正しい呼吸の方法を学ぶこともできますので、セルフケアや調整法を身につけることも可能になりますので、健康を維持することにも繋がるでしょう。
胸郭モビライゼーションの理学療法のやり方
呼吸の基本は複式呼吸であり、息を吸って筋肉を緊張させ、息を吐く際に筋肉を弛緩させます。
息を吐くときには、ゆっくりと深くすることを意識することによって自律神経の働きを高めることができます。
呼吸不全の場合には、胸郭の動きが低下していることが多く、特に呼吸に重要な外肋間筋や横隔膜をうまく使うことができていません。
しかし胸郭モビライゼーションによる理学療法において徒手胸郭伸張法を実施した場合には、肺機能の向上はもちろんのこと、胸郭の拡張性、動脈の酸素飽和度、脈拍数などにおいて改善を期待することが可能です。
呼吸に関する周辺筋肉に柔軟性を持たせることができ、関節可動域が改善することによって、呼吸がしやすくなるからであると言えます。
慢性的な呼吸不全だけではなく、慢性的な倦怠感、睡眠障害、全身の痛みやコリなどにおいても改善が期待できる徒手療法であるでしょう。