腸脛靭帯炎(ランナー膝)とは
腸脛靭帯炎とは、「ランナー膝」と呼ばれており、ランニングや自転車などの動作によって引き起こすことが多い症状です。
大腿四頭筋の外側に位置している腸脛靭帯と太ももの骨である大腿骨とが過度に摩擦が生じることによって限局性の炎症です。
ランニングなどの際に地面に足をつけて、体重がかかった際に膝の周囲に痛みを感じるのが特徴です。
安静にしていれば痛みがひくことが多いですが、症状が長引く場合には常に痛みを感じることや腫れてくるようなこともあります。
特に試合やレース前などに練習量が急に増える時期に集中して発症がみられることが特徴的です。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)の概要
腸脛靭帯炎は特に走り慣れていない市民ランナーなどが急激に練習するような場合に引き起こすことが多く、一度発症してしまうと治りにくいことでも知られています。
炎症を引き起こす腸脛靭帯は、膝を伸ばしている状態では大腿骨に触れることはありません。
しかし軽く曲げた状態で接触するようになり、この動作を繰り返すことによって摩擦が生じるために、急激にランニングなどを開始すると腸脛靭帯を損傷し炎症を起こしてしまうのです。
腸脛靭帯は骨盤を形成している腸骨の大腿筋膜張筋から脛骨にまで伸びて付着している、とても大きな靭帯になります。
ランニングや自転車などによって、大腿筋膜張筋に緊張が生じることによって、腸脛靭帯と大腿骨の摩擦が生じやすくなることが分かります。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)の原因
腸脛靭帯炎はランニングや自転車などのように、屈伸運動を繰り返し行うことによって発症するものです。
急激に運動量が多くなってしまう場合に引き起こすリスクが高くなりますが、それほど走り慣れておらず、筋力不足である場合には発症する可能性が高くなってしまいます。
また準備運動が不足していることによっても、症状が現れることもあります。
そのためランニングなどの運動の前後にストレッチを行うことや、負担を軽減させるためにテーピングを行うことが効果的であると知られています。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療
腸脛靭帯炎の治療は、安静とアイシングを基本として、筋膜リリースなどの理学療法、テーピング、ストレッチが効果的であると期待されています。
一般的なこれらの治療についてご紹介していきましょう。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療の基本
腸脛靭帯炎は腸脛靭帯に炎症が生じていることから、炎症を抑えるために安静にし、痛みが生じている部位にアイシングをすることが治療の基本となります。
初期症状の場合であれば、この対処法だけで痛みが軽減することが多いのですが、激しい痛みや腫れがみられる場合には薬物療法が必要なこともあります。
適切な処置によって改善させることは可能ですが、原因を取り除かないことには運動した際に再発してしまうことがあります。
そのため、筋膜リリースやストレッチなどに取り組むことが効果的であると考えられており、再発防止のためのテーピングも有効になります。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)に対する筋膜リリース
腸脛靭帯炎である場合には、腸脛靭帯周辺の筋肉に大きな影響を与えていることが多く、筋膜リリースによって歪みを整えることによって改善を目指すことが期待できます。
臀部の筋肉である大殿筋が緊張を起こしており、筋膜に歪みや硬さがみられることが少なくありません。
大殿筋は腸脛靭帯ともつながっているために、腸脛靭帯炎に大きな影響を与えるものと考えられます。
また腰椎から大腿骨まで続く腸腰筋に緊張がみられることもあります。
腸腰筋が大腰筋や小腰筋、腸骨筋などで形成されているインナーマッスルであり、周辺の筋膜にも歪みを生じさせやすいことで知られています。
特に急に運動やトレーニングをした場合などであれば、筋膜リリースによって状態を整えることが大切です。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)に対するテーピング
膝に3本テーピングする方法が効果的です。
1本目は膝下からスタートし、膝の外側を通って太ももまで貼ります。
2本目は1本目とクロスするように膝下からスタートし、膝の内側を通って太ももまで貼ります。
腸脛靭帯炎は、筋力不足で膝を酷使してしまうことによって生じることが多いため、筋肉をサポートするテーピングは負担軽減のために大変有効です。
そのため痛みが生じてからではなく、予防のためにテーピングしておくことも効果的であると言えます。
テーピングを貼る際は、2割程度を引っ張って貼っていくことによって、筋肉をうまくサポートさせることができます。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)のストレッチ方法
腸脛靭帯炎は、周辺筋肉の緊張によって引き起こしてしまうために、ストレッチが効果的だと考えられます。
腸脛靭帯に対する簡単なストレッチ方法をご紹介しましょう。
肩幅に立って、片手を腰に当てます。
反対の手を上に挙げ、腰に当てた手を支点にして体をゆっくりと傾けていきます。
横腹をふくらはぎを伸ばすようなイメージで、ストレッチしていくと効果的です。
筋力が低下している方が急に市民ランナーとなって大会に出場するような場合に引き起こすことが多く、準備運動の不足が原因のひとつと言われます。
そのためストレッチには、引き起こした際の治療としてや、引き起こさないようにする予防としての効果が期待できるのです。