最新記事

【茨木英光】「内臓は左右対称?」

先生こんにちは。

最近、内臓はもしかして
左右対称に作られているのではないか
と思うようになってきました。

正確に言うと、
「左右の臓器が対を成して機能している」
と言った方が正しいでしょうか。

もちろん確固とした証拠があるわけではないのですが、
このように思いついたことから仮説を立てていくことは
新たなテクニックの発見となったりもしますので
意外と大事だったりもします。

左右対称と思っている器官ですが

1 腕頭動脈と大動脈弓
2 心臓
3 胃と十二指腸
4 胆嚢と膵臓
5 肝臓と脾臓
6 虫垂と直腸

ここでは元から2つある臓器は割愛しています。
肺、腎臓、卵巣 などです。

1 腕頭動脈と大動脈弓

この2つの動脈は胎生期第4週に大動脈嚢と呼ばれる、
正中線上にある大きな血管から左右に分岐して作られています。

心臓を出て左に行くのが大動脈弓で、右に行くのが腕頭動脈ですから、
腕頭動脈は右側の大動脈弓に相当するのではないでしょうか。

2 心臓

心臓も外観は1つの臓器ですが、中は左右に分割されています。

右心房と右心室・左心房と左心室
左心室は全身に血液を送る役割があるため、
右心室の3倍も筋肉が厚くなっています。

血液を送る先が左右で異なりますが、
きれいに左右対称の構造となっています。

3 胃と十二指腸

胃は左に湾曲して、十二指腸は逆の右側に湾曲をしてバランスを取っています。
その働きは共に消化を行っています。

胃は胃酸によって食塊を分解し、
十二指腸は膵液と胆汁によって分解を行っています。
そのため対をなして消化をしていると考えられる訳です。

4 胆嚢と膵臓

胆嚢は肝臓から胆汁を送られて貯蔵する器官です。

膵臓は外分泌と内分泌の両方を担い、
外分泌はリパーゼを分泌して脂質を分解します。

内分泌はグルカゴンとインスリンを分泌して血糖値を調節しています。

胆汁と膵液は共に大十二指腸乳頭へ集合して分泌されています。

胆嚢の方が小さいですが、膵臓は内分泌も担っていることを考えたら
その大きさの違いも納得いくものではないでしょうか。

5 肝臓と脾臓

これら2つの期間は共に網内系と呼ばれるリンパ組織で
体内に侵入した抗原を殺傷する役割があります。

肝臓は小腸で吸収された水分、栄養、カビやウイルス
良いものも悪いものもすべてが肝臓へと運ばれます。

小腸にはパイエル板というリンパ組織がありますので
食物内に存在している外敵は、通常ではここで処理されるのですが
体調の良し悪しによっては、パイエル板で取り逃がすこともありますので
小腸を通過した抗原は、次に肝臓で処理さることになります。

肝臓にはクッパー細胞という、マクロファージの親玉みたいな
食作用に強い細胞が存在していますので
このクッパー細胞が抗原を食べてくれます。

しかし肝臓でも取り逃がした抗原は
次には心臓へ行き、肺へ行きます。

肺では塵埃細胞(じんあいさいぼう)という、
これもまた強い食作用を持つ免疫細胞が存在していますから
健康な状態では肺で処理が完了するのですが、
ここでもまた取り逃がしたら、全身に行き渡ってしまうのです。

つまり脳へも流れて行ってしまうのです。

しかし最後の砦として、
腹大動脈に行った抗原の一部は脾臓に入ります。

脾臓は巨大なリンパ組織ですから、
Bリンパ球や、キラーT細胞などが多数待ち構えています。

ここで興味深いのは、脾臓から出た血管は門脈に合流して
再び肝臓に入る仕組みとなっていることです。
もう一度クッパー細胞の攻撃が待っているのです。

そのため脾臓でも取り逃がした抗原は、
もう一度最初からクッパー細胞、塵埃細胞の攻撃を受けなければなりません。

脾臓と肝臓の、対をなした殺傷システムは人体の神秘と言える程です。

6 虫垂と直腸

これは大きさが全く違うので左右対称とは思いにくいのですが
共に免疫に関わっている器官です。

虫垂は親指ほどの大きさですが、
中膜が厚くなっているため、内腔は狭くなっています。

その中膜にはパイエル板のようなリンパ組織が多数存在しています。

隣接する回盲弁は、大腸菌が小腸に逆流することを防ぐことだと考えられます。

小腸は絶対的なクリーンルームですから、
上からも下からも余計な抗原が入ってはいけないのです。

その働きを助けるために、虫垂は強い免疫作用を行って、
回盲部での悪い菌の繁殖を防いでいるのではないでしょうか。

一方の直腸ですが、これは肛門から菌や寄生虫が入って来たときに
大腸の奥深くに入り込まないように働く免疫器官だと考えられます。

鳥類では肛門付近にファブリキウス嚢という
Bリンパ球の集まる免疫器官があることが確認されています。

人間でも鳥類ほど免疫器官が発達していなくても
同じく肛門からの外敵を侵入する働きがあることは十分に考えられます。


僕は今までは臓器って、お腹の中にポンポンと
無秩序に入っているもののようなイメージでした。

でも最近は、日本円の「¥」のマークのような、
左右対称の軸が中心にあって
その端に対を成して臓器が配置されているのではないか
と考えるようになってきました。

これはもちろん私の単なる仮説ですが
こうやって人体の働きについて思いを巡らせてみるのも面白いと思います。

ありがとうございました。
茨木英光

茨木先生のDVD・動画教材

▼DVD教材▼














▼動画教材▼