頭・首の手技

【茨木英光】自分で考えることの大切さ

先生、こんにちは。
茨木英光です。

ダブルモーションテクニックDVD 脳・脊髄編で眼圧は脳圧そのものであることをお話いたしました。
それについて興味深い臨床例がありましたのでそれを交えて自分で考えることの大切さについてお話させていただきます。

眼圧を下げる臨床例

先日パイロットの方が来院されました。
症状は眼圧の上昇で、眼圧が現在25mmHgあり、20mmHg以下でないとフライトを許可されないということで来院されました。
施術の結果は、初回施術後の検査で21mmHgまで下がり、二回目の施術で16mmHgで下がったのでフライトができるようになりました。

ウィキペディアを見てみると、「眼内液はリンパ液の一種であり、毛様体で分泌されることによって補給される。」とあります。
この一文だけを見ると毛様体自体が眼内液を分泌しているように思ってしまいますが、 日本人体解剖学 第二巻には視神経を拡大した図があり、そこには視神経を包んでいる視神経鞘にはしっかりとくも膜下腔が描かれています。
また、「眼球に近づくと、くも膜下腔および硬膜下腔は互いに交通するようになる。硬膜は、くも膜とはリンパを充たす硬膜下腔によって境され、眼球で強膜と癒合する。」 とちゃんと書かれています。
ですから眼球に脳脊髄液が流れていることが想像できます。

また、脳圧の正常値は60~150mmH2Oであり、眼圧の正常値が10~21mmHgとされています。
これを単位換算すると、正常眼圧は135.95mmH2O~285.49mmH2Oとなり、まあまあ合致しているのではないかと思います。

上の数値から見ると、眼圧が20を超えるというのは、脳圧もかなり上昇している状態ではないでしょうか。
また、発生学的に眼球をみると、視神経は胎生期に視覚路の第三ニューロンが伸びて水晶体を包むようにして形成されています。
このようなことから、私は眼内液は脳脊髄液であり、脳圧が眼圧を決定していると考えています。
この仮定に基いて脳圧を下げるように後頭骨と環椎を揃える施術をしてみると、2回の施術で脳圧が正常値まで下がりました。

どの医学書やインターネットを調べても眼圧は脳圧であるとは書かれていませんが、おそらくこの考え方で間違っていないと私は考えています。

理論とテクニックを一体にさせる方法

さて、大事なのはここからなのですが、上記の臨床例は、私がいくらでも偽りを書くことができるのでもう信用していただくしかないのですが、眼圧は脳圧と同義ではないかと考えるように至った経緯が大切だと思っています。
視神経にくも膜下腔が表記されている図を見ても、初めて見たときはきっと心に残ってこないと思います。
しかし勉強を続けて行くうちに、以前に見た図などを思い出すことがあります。
そのパズルが組み合わさったときにひとつの仮説が生まれてきます。
仮説に基づいて施術をしてみるとやっぱり効果が出た。
この時に理論とテクニックが初めて一体となるのです。

誰しも手技療法を勉強し始めた頃というのは知識を一から吸収しなければなりません。
解剖学や生理学を学び、実技も学んでいきます。
実技では「腰痛はこう治すのだ」と学びますが始め自分の考えはそこにはなく、先生の言われる通りに行います。
しかしなぜそうすれば腰痛が良くなるのかを説明してくれないので私は腰痛の方には腰をアジャストすれば良くなるものと思っていました。
また、様々な反射点を刺激すれば良いのだとも思っていました。

しかし実際に患者様を相手にすると、そのように学んできた理論や実技は一瞬で吹き飛んでしまいます。

ぎっくり腰の患者さんに対する臨床例

セミナー中にもお話したことがありますが、病院に勤めていた時に、ぎっくり腰の患者様がストレッチャーで運ばれて来てまったく動くことができない状態でした。
しばらく休んで帰って下さいと言うこともできないのでなんとかしなければなりません。
そこで四苦八苦しながら椎間関節を持ち上げるように動かしてみるとその人は歩いて帰ることができました。
全く動けない人にアジャストなんてできませんし、反射点を刺激してもその場で立てるわけではありませんでした。

この経験を通して、椎骨の変位というのは上下左右に同じ確率で変位するのではなく基本は下方に変位するものではないか、重力という物理の法則は万物に当てはまるのであり、人体も建築物もすべての物は物理の法則から逃れられないのではないかというように考えるようになりました。
人体は素晴らしい小宇宙ということも正しい考えなのでしょうけど私は人体だけを特別視しない観点で様々な症状を考えていこうと思うようになりました。

独自の施術効果を確立させるには

手技療法の真骨頂は、レントゲンやMRIなどで異常が発見できない症状でも改善できることです。
それ故に画像で変化を証明することが難しい場合がほとんどです。
また法的にも画像で証明することは困難です。
そのためどうしても患者様の感想が頼りであり、術者はそれを積み重ねて自分の施術を作り上げていきます。

しかし、しっかりとした考え方に基づいていないとセミナーなどで他の人に教える時に伝わりません。
受講生にも「よくわからない神業」として写ってしまいます。
そうなるとせっかく受講してもこの先何を勉強していいのか分からなくなってしまい、いつの間にか昔学んだ解剖学や生理学を忘れてしまいます。

本当は医学書に施術のヒントが散りばめられています。
しかしそれはいつパズルが組み合わさるのか分からないのでどうしてもより良いテクニックを求めて彷徨ってしまうのです。
テクニックも関節操作やソフトタッチのものなど、様々なジャンルがあります。
まずは自分の得意とするジャンルから追求していくことをお勧めいたします。
そうすると自分の中でテクニックを縦に積み上げて行くことができるので独自の理論がひらめいてきます。

学ばれたテクニックは一度疑ってみて検証して、自分の考えで組み立てていくとしっかりとした施術効果が確立されていきます。

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