先生、こんにちは。
茨木英光です。
今日は吸引分娩による弊害についてです。
私どもの治療院では産後の骨盤矯正に重点をおいて施術を行っていますので、産後のお母さんがよくお越しになります。
その中でも産後の骨盤の痛みが強い方というのは、決まって吸引分娩を行っている方ばかりです。
吸引分娩とは、赤ちゃんがなかなか出てきてくれない場合にシリコンのカップを赤ちゃんの頭に付けて引き出す分娩方法なのですが、赤ちゃんを強制的に引き出すため、母体にも赤ちゃんにも影響が出ることが少なくありません。
吸引分娩の弊害
吸引分娩を行うとどのような弊害が出るのでしょうか。
1 会陰裂傷
会陰や産道が裂けてしまう症状です。
医師が少し切開する場合もあります。
これは日にちの経過で治癒する場合が多いのであまり問題はありません。
産院で必要な処置もしてくれるでしょうから手技療法としては施術の必要はありません。
2 骨盤がグラグラして歩けない
このような症状でお越しになる方がけっこういらっしゃいます。
「産後から外股でないと歩けなくなり、座っても腰がグラグラしている。半年くらいしたら治ると病院で言われたけど、一向に治る気配がない。」
そのような症状を訴えます。
吸引分娩を使用するということは赤ちゃんの頭が長時間にわたり骨盤で引っかかっていた状態だったので、骨盤がかなり開いたままとなっているのです。
坐骨の位置を調べると大きく開いているためお尻の見た目も大きくなり、触診しても仙腸関節がグラグラしています。
このような方には股関節・坐骨・仙腸関節を締める矯正を行います。
初回から効果がはっきりと現れるので施術の難易度もそれほど高くはなりません。
患者様にも「ちゃんと良くなりますから安心してください。」とお伝えすることができます。
3 恥骨の不安定感と痛み
骨盤のグラグラ感に加えて恥骨の痛みがある場合は施術の難易度が上がります。
恥骨が痛いということは恥骨結合が顕微鏡レベルで断裂をしている疑いがあります。
今までお越しになった方で一番酷かった方は、恥骨を押さえてうずくまるようにしてお越しになりました。
その方は出産時に吸引分娩を行い、「骨盤がメキメキッと音がして裂けた」と仰っていました。
恥骨を触診してみると大きくずれていて、脚の長さも2センチほど違っていました。
この方には通常の骨盤矯正に加えて恥骨を直接締める施術を行いました。
初回から楽にはなるのですが、次回にはまた痛みが戻っているといった具合でなかなか改善が進みにくかったのを覚えています。
結局この方が痛みなく歩けるようになるまでに16回の施術を要しました。
4 尿モレが治らない
骨盤や恥骨などの骨の矯正は初回から効果が現れるのですが、膀胱や子宮などの軟部組織については改善が見られるまでに時間がかかります。
膀胱は子宮の前にあり、膀胱子宮靭帯で連結していますから、吸引分娩をすることで膀胱も引っ張られてしまうのです。
産後から尿モレが治らないと訴える方は膀胱が下がっているので残尿感があり、くしゃみなどでいきむと尿がもれてしまいます。
このような方は恥骨の上を触診するとポコッと膨らんでいて中に入っている膀胱がゆで玉子が入っているような硬さを感じます。
側臥位にて膀胱を手掌で押し上げて矯正していくのですが、初回から効果を感じる方もいらっしゃれば、数回後に改善いていく方もいらっしゃいます。
このテクニックは今後ご紹介していく予定です。
5 次の出産が難産となりやすい
赤ちゃんを強い力で引き出すため、子宮も一緒に引っ張られます。
そのため出産した後も子宮が下がったままとなり、下腹がポッコリと膨らんでいます。
子宮が下がると膣との角度が鋭角となり、産道が曲がった位置となってしまいます。
曲がった産道ではやはり産みにくく、難産の可能性を高めてしまうため次の妊娠までに子宮を上げる矯正が必要となります。
6 子宮脱
これが最も厄介です。
「お風呂で見ると子宮が出ているので、指で押し込みます。」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
もちろん私が直接拝見することはありませんので腹部の上からの触診となります。
この方は下腹がぽこっと膨らんでいて、なおかつお腹に桃が入っているような硬さがあります。
場合によっては手術が必要ですが、現在お越しになっている患者様は「手術を受けると次の子どもを産めなくなるので手術をせずになんとかして欲しい。」と希望されています。
子宮を元の位置に戻す施術も膀胱と同じく側臥位で押し上げていくのですが、子宮は膀胱よりも大きく重たいので押し上げてもまたすぐに下がってしまいます。
現在6回の施術を終えましたが、くしゃみをするとき以外は出てこなくなったと改善が見られています。
それでもまだ完全に治ったわけではないのでどこまで良くなるのかはまだ分からないところがあります。
このように吸引分娩をして産後に様々な不調で悩んでいる方はかなり多いと思います。
吸引分娩を使用するとしないでは産後の症状の度合いが全く違ってきてしまいます。
なかなか赤ちゃんが出て来ないので仕方なく吸引を行うのですが、できれば吸引を使わずに出産できれば何よりです。
次回は赤ちゃんにとっての吸引分娩の弊害についてです。
関節マスタードットコム
茨木英光