膝蓋骨モビライゼーションとは
モビライゼーションは関節に対して徒手を活用して他動的に運動させることによって、制限のある関節を伸長させ、可動域を広げて痛みを改善するという理学療法です。
またその手技によって周辺筋肉の緊張をほぐし、血流を改善させることによって、免疫力を向上させることにも繋がります。
ここでは膝蓋骨へのモビライゼーションとはどのような手技療法なのか、その概要についてお伝えします。
膝蓋骨の働きについて
膝蓋骨(しつがいこつ)とは膝のお皿を指しており、膝のもっとも前面に存在する骨のことをいいます。
膝関節は複雑な仕組みになっており、脛骨(すねの骨)と大腿骨(太ももの骨)が連結している上に膝蓋骨があるような形になっています。
しかも骨だけではなく、軟骨や靭帯、筋肉、腱などによって形成されており、膝関節がスムーズに動くことによって歩行ができたり、階段を昇降したりといった動作を行うことができるのです。
そのような動きの中で膝蓋骨は、大腿部の前面にある大腿四頭筋とすねの脛骨を繋ぐ膝蓋靭帯を収縮させる滑車のような役目をしています。
膝を伸ばす際には筋肉の収縮が起こりますが、その動きを脛骨に伝えスムーズに曲げ伸ばしができるようになっています。
膝蓋骨モビライゼーションの目的
膝蓋骨は健康的な人であれば、他動的に動かしてみるとスムーズにグラグラ動くものです。
膝を曲げ伸ばしするような、歩行時や段差昇降などの屈伸を使う運動などでスムーズに動くくようになっており、痛みなく動作することができます。
お伝えした通り、大腿四頭筋と膝蓋靭帯を繋いでスムーズに収縮させる役割がありますが、膝蓋骨の内側に軟骨があり、それがクッションの役割となって滑らかに動くようになっています。
しかし加齢や外傷などによって、膝蓋骨の内側にある軟骨がすり減ってしまい、痛みが生じたり、中には膝蓋骨が外れたり、外れかけたりするようなことがあります。
そのような症状がみられた際には、膝蓋骨の動きはとても悪くなっていることが分かります。
強い痛みを生じることから安静にしておかねばなりませんが、さらに筋力を衰えさせてしまい症状を悪化させてしまう可能性もあります。
そのような状況において膝蓋骨モビライゼーションは、徒手によって他動的に運動させることによって動きを改善させ、痛みを取り除くことができるのです。
膝蓋骨モビライゼーションの効果
膝蓋骨モビライゼーションの効果には、膝関節に生じる「疼痛の軽減」と「拘縮の改善」の2つを挙げることができます。
膝蓋骨は関節内包運動と呼ばれる「関節の遊び」があります。
外側から他動的に動かしてみても、膝関節に問題のない方であれば、グラグラ動くことが分かります。
これは膝蓋骨の内部にある軟骨が十分機能しており滑りがいいためであって、膝関節伸展がうまくできるような状態であると言えます。
正座ができないなど、関節可動域に制限がある場合には、関節炎や靭帯などに炎症が生じており、一定のパターンでしか動かすことができなくなります。
そのような症状の改善には、膝蓋骨モビライゼーションが期待されています。
膝蓋骨モビライゼーションのやり方
膝蓋骨モビライゼーションは、膝関節に生じる疼痛の軽減と拘縮の改善を改善させるための施術に取り組むことになります。
膝関節に痛みと拘縮が起きる場合には、膝蓋骨の動きが悪くなっていますので、徒手による他動運動や牽引などを実施します。
特に膝関節の可動域制限や疼痛など膝蓋骨の機能に異常がある場合には、有効な手技療法であると言えるでしょう。
その他の関節を構成する骨や関節包、靭帯に問題がある場合には、症状に適した関節モビライゼーションを、神経系の問題が疑われる場合には神経モビライゼーションによって解決を図ります。
そのため、まずは適切な身体評価が必要となり、その総合的な評価から適切な治療法を選択することが大切です。