肘内障とは
『肘内障』とは、いわゆる「肘が抜けた」と呼ばれる状態のことを指しています。
2歳から5~6歳くらいの子供に多い症状です。特に3歳くらいまでに最も多くなるとされています。
親と手をつないでいる時に子供が転びそうになって、とっさに手を引っ張ってしまうような場合に、肘内障を起こしてしまうことがあります。
手をつないで遊んでいるときに、捻じってしまうような動作によって引き起こしてしまうこともあります。
肘内障を引き起こしてしまうと、たちまち子供は泣き出してしまい、引っ張った手を使わないようになります。
また手を触れることを嫌がり、見た目にもだらりと垂れ下がっており、やや内側を向いたように見えます。
肘内障とは一時的な極わずかな亜脱臼ですから、何かの際にもとに戻ってしまうこともあるのですが、多くの場合では自力で改善することはなく、整復が必要となります。
骨折などが見られないのであれば、完全に整復することによって、すぐに手を使うことができるようになります。
肘内障の原因
肘内障は、「腕が抜けた」と表現されるのですが、厳密にいいますと肘の脱臼ではなく、手を引っ張ったり捻じったりすることによって、橈骨頭が靭帯からずれてしまうことを指しています。
手をつないでいて手を引っ張ったり、転んだ際に手をついて、その衝撃によって肘内障を引き起こしてしまうことがあります。
遊んでいるうちに、何かの際に肘内障を起こすこともあり、そのような場合には痛みの原因が本当に肘内障なのかどうか疑うことが必要となります。
場合によっては骨折を伴っていたり、脱臼しているような場合もあるからです。
適切な診断が必要となりますので、レントゲン検査が行われることもあります。
5~6歳までの子供に多く、7歳以上くらいになると発症が少なくなることから、子供の肘関節の特性によるものであると考えられています。
肘関節がまだまだ未熟なために、少し引っ張ったり捻じったりするだけで、肘の橈骨頭が輪上靭帯(輪っか状になっている靭帯)から外れかけてしまうのです。
突発的に激しい痛みが生じますので、整復前の子供は激しく泣き叫んでいることがほとんどです。
痛みと共に恐怖心があるからです。
腕はやや内側に向いて、だらりと垂れ下がっており、肘を曲げることもできなくなっています。
肘内障の場合、レントゲン検査を行っても、異常な所見は見当たりません。
痛みは強く生じていますが、腫れがみられることもありません。
そのため骨折や脱臼が認められないのであれば、手技によって整復を行うことになります。
整復の後は手を使うことができますが、幼児期の間は繰り返してしまうこともあります。
ただ成長と共に発症は少なくなりますので、心配すべき症状ではありません。
くれぐれも骨折や脱臼を肘内障と誤診しない、適切な診断が必要となります。
肘内障の整復について
肘内障は、手技のよって整復させることが可能で、整復が成功すればすぐに上肢を使うことができるようになります。
ただ肘内障は小さな子供に多い症状なので、どのような状況で痛みが生じているのか確認することが大事です。
多くは手を引っ張ったり、捻じったりすることによって生じますが、手を強くついたり、高いところから転落したような場合であれば、脱臼や骨折を生じている可能性があります。
誤って肘内障と診断して、悪化させてしまうようなこともありますので、適切な診断が大切となります。
肘内障の整復をする前の注意点について
肘内障の整復の前に注意すべき点は、本当に肘内障による症状なのかどうかという点です。
肘内障を引き起こすのは小さな子供ですから、肘の痛みによるものと、手を動かせなくなった恐怖心により、手を触ろうとすることを極端に嫌がることがあります。
手がだらりとなって挙げられませんから、バンザイができるかどうかで、肘内障を確認することができます。
さらに別の部位を調べてみて、本当に痛いのは肘なのかどうか、別の部位で骨折を起こしているような部位はないかチェックします。
手首、肘、脇の下などを触れてみて、強い痛みや腫れ、熱感があるようでしたら、脱臼や骨折などを疑うことになります。
肘内障はレントゲン検査をしても、異常な所見は認められませんから、脱臼や骨折と区別するために行われる場合もあります。
どのような状況で症状が現れたのか、確認することも大事でしょう。
肘内障の整復の方法
肘内障は手技のよって整復していきます。肘を直角に曲げた状態で回外して手のひらを上に向け、患側の橈骨頭を拇指によって圧迫しながら、肘を屈曲していきます。
拇指で圧迫している橈骨頭部に「コクッ」という小さな整復音を感じることで、整復が成功しています。
この動作によって、外れかかっている輪上靭帯が、元通り肘の橈骨頭に戻ります。
すぐに動かすことができますから、バンザイすることによって改善したことを確認できます。
整復後には固定は不要ですが、まだ肘の成長が未成熟ですから繰り返し引き起こす可能性があります。
そのため手を引っ張らないようにして、再発させないことが重要になります。