距骨下関節の構造や動きについて
足関節はとても複雑に形成されており、全身の骨全体の約4分の1は足部に集まっていることが知られています。私たちが歩いたり、走ったり、また凸凹したような路面であっても対応ができるのは、この足部の複雑な構造によるものであることが理解できます。
ここでは距骨下関節の構造を中心に捉え、モビライゼーションの考え方についてもご消化していきましょう。
距骨下関節の構造
距骨下(きょこつか)関節とは、足首である距腿関節を形成する脛骨と距骨の下に位置し、踵骨との関節のことを指しています。
距骨と踵骨との関係は、うまく凸凹によって形成されており、安定できる仕組みとなっていることがわかります。
ほかの関節においては筋肉や靭帯によって支えられていますが、この距骨下関節においては小さな靭帯だけで支えられています。
機能面をみると、足部と下腿を繋いでいる重要な役割を担っているパーツであり、歩行など移動面において大きな影響を持つ関節であると言えます。
ちなみに足部には距骨下関節のほかにも、ショパール関節(横足根関節)・リスフラン関節(足根中足関節)・中足趾節関節があり、歩行時や立位時において体をしっかりと支えることができるようになっています。
足を内側から見るとアーチ構造になっていることが分かり、膝関節や腰などへの負担を軽減するためのクッションの役割を担っているのが分かります。
距骨下関節の動き
距骨下関節は冒頭にもお伝えしている通り、下腿と足部を繋ぐ重要な役割を担っています。
下腿を内旋もしくは外旋させる際には足部まで運動連鎖が生じるように、距骨も同様に内転もしくは外転する仕組みになっており、踵骨も回内もしくは回外させています。
可動域は外転においては0~10度、内転においては0~20度、回外においては0~30度、回内においては0~20度となっています。
しかし現代においては、過緊張によって動きがスムーズに行われないことが多くなっており、踵骨底屈や背屈制限を引き起こすことによって足部のアーチが失われることが多くみられます。
足部のアーチが崩れてしまうとクッションの役割を果たせず、立位時や歩行時において、衝撃がそのまま膝や腰に伝えることになります。
膝や腰の痛みを生じさせる原因となってしまいますが、それが距骨下関節の動きが原因であることが明らかにならない場合においては、ストレッチや関節可動域訓練に取り組んでもなかなか良くならないということが起きてしまうのです。
距骨下関節モビライゼーションの実際
足関節の可動域に制限がみられることは加齢によるものや激しいトレーニングなどによるものなど、さまざまな症例がみられます。
「背屈制限」「底屈制限」に分けることができますが、いずれにおいても距骨の滑りが悪くなることによって生じる可動域制限であり、距骨下関節モビライゼーションによるアプローチが有効となります。
評価の方法
足関節は脛骨をはじめ、腓骨、距骨などから形成されており、関節には距骨下関節のほかにも、さまざまな関節からなっております。
細かい骨がいくつも凸凹によって関節が形成されており、さまざまな筋肉や靭帯によって支えられています。
足関節のトラブルに多くみられるものに「足関節背屈可動域制限」があります。
背屈にした際に制限が出現するというもので、関節可動域訓練や下腿後面筋群のストレッチだけしていてもなかなか制限が解放されることがありません。
この場合、距骨の滑り自体が悪くなっていることが多く、その状態によって背屈制限を引き起こしています。
距骨の滑りが悪くなっている原因として、屈筋支帯が関連していると考えられます。
屈筋支帯とは足底腱膜に付着している靭帯であり、周辺筋肉の緊張などもあわせて足底腱膜の動きが悪くなることによって、距骨自体の滑りも悪くなってしまうことがあるのです。
距骨下関節モビライゼーションの実際
先ほどもお伝えしている通り、足関節背屈制限は単に関節可動域訓練や下腿後面筋群のストレッチだけに取り組んでいても、足部のアーチを潰してしまうだけで改善に繋げることはできません。
アスリートなどにこのような症状が生じていることが多くみられます。
距骨が後方にうまく滑らないようになり背屈制限を引き起こしますが、周辺筋肉である長母趾屈筋の伸張性が足りないことが原因であると考えられます。
関節モビライゼーションによる必要なアプローチとして距骨の滑りが良くなるように、直接的に影響を受けてしまう前距腓靭帯と前部関節包の柔軟性を取り戻す必要があります。
腓骨の回旋がスムーズとなり、遠位脛腓関節の可動性が良くなることによって、距骨の滑りが良くなるようになります。
つまり足関節だけをみても、さまざまな関節や靭帯、腱などに対してアプローチしなければならないということになります。
足関節の構造についてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
また距骨下関節だけではなく、膝関節や股関節などにも着目することが大事になりますし、体幹を捉えることによって全身のバランスを調整することも可能となります。