足の手技

足関節モビライゼーション | 理学療法 による距腿関節の調整方法とは

足関節モビライゼーションの重要性

足関節はとても複雑に形成されており、全身の骨の約4分の1が集中しており、それだけ関節もたくさんあります。
私たちが転倒せずに歩行ができるのは、緻密に形成されている足関節のおかげであるといっても過言ではありません。

しかし、そのような仕組みであるために、歪みや緊張を生じさせることによって、歩行状態を低下させてしまう可能性があることも知っておかねばなりません。

足関節の仕組みと役割

私たち人間には全身に200個以上もの骨があると言われており、中でも足部には50個以上もの骨によって形成されていることが知られています。

骨と骨との間には関節が形成されており、歩行や立位、姿勢保持など、さまざまな機能を持っているだけではなく、衝撃吸収の役割なども担っています。
それは、地面を足部によって支えているためです。

歩行や立位のために必要な平衡感覚のために、各関節は複雑な機能を有しており、私たちがイメージしているよりも精巧に作られています。

足部は前足部、中足部、後足部に分けることができ、それぞれに関節(中足趾節関節、ショパール関節、リスフラン関節)を持っています
足部はアーチ状になっており、歩行時にはクッションの役割を持っていて、必要以上に足や身体に対して負担にならないような仕組みになっています。

また足首には距腱関節と距骨下関節で形成されており、これらの関節をうまく活用することによって、歩行や立位などにおいてバランスをうまく取ることができるようになっているの
です。

足関節の可動性に問題があると歩行能力が低下してしまう

高齢期になると筋力の低下や膝の痛みなどに伴って、歩行能力に衰えが見られるようになります。
加齢に伴って、少しずつ歩行スピードが遅くなってくるようになりますが、この頃から少しずつ歩行能力に低下が始まります。
高齢者の歩行能力の低下は、筋力の低下やバランス機能の低下、関節可動域の低下など、あらゆる要素が総合的に絡み合って起きていると考えられています。

しかし高齢者だけではなく、若年者であっても関節可動域の制限によって歩行能力が低下することが明らかになっています。
歩行状態と下肢の関節可動域について調査をしてみると、特に足関節において背屈・底屈が著しくなってしまうと、歩行や立位のバランスに異常をきたしてくるのが分かっています。

つまり足関節の可動域が低下してしまうと、私たち人間は歩行能力や歩行バランスにおいて異常が生じるものであると言えるのです。

しかし高齢者の歩行状態が低下した場合には、一般的に筋力低下で済まされてしまうことが多いために、それが足関節の可動域によるものであると考えられるシーンは少ないのではないでしょうか。

足関節において背屈・底屈といった制限は、動作を妨げるものになってしまいます。
そのため、足関節の可動域に対するアプローチが、自立歩行や立位などに大切なものであると言っても過言ではないでしょう。

足関節モビライゼーションによる理学療法とは

足関節モビライゼーションとは、他動的に運動を加えることによって可動性を高め、機能改善が期待できる足関節に対する理学療法のことを言います。
歩行機能を低下させないためにも、足関節モビライゼーションの役割がとても重要になると考えられます。

足関節モビライゼーションの必要性

足関節は冒頭からお伝えしている通り、立位時に体をしっかりと支えバランスを保ち、衝撃を吸収する役割も持ち、歩行時に足を蹴りだして前に進むことができます。

私たちが考えている以上に、さまざまな役割を持っている部位であるために、きちんと調整しておかないと、体全身に対してまで不調の原因になってしまうこともあるのです。
特に距腿関節の奥深くある距骨は、ほかの部位の関節とは違って筋肉で支えられているわけではなく、滑らかに足首が動くように自由に動かせるような仕組みになっています。

ただ構造上、身体の全体重が距骨に負荷がかかってくるために、無意識の間に距骨に歪みを生じさせてしまっていることがあるのです。

しかも筋肉が付いていないのでこりや痛みを感じるようなこともないために、調整しないまま過ごしてしまうことが珍しくありません。
そのままバランスが悪いまま過ごしていると、全身に歪みを生じさせるようになり、膝や腰などに痛みを生じさせてしまうようになるのです。

足関節モビライゼーションによる距腿関節の調整

距腿関節は脛骨をはじめ、腓骨、距骨などから形成されていますが、特に距骨は全身を支える重要な役割を担っているために、歪みが生じやすい部位であるとも言えます。

例えば、筋力の低下した高齢者の場合であれば、距骨は後傾してしまうことが多くなっており、踵が重心となってしまって全身のバランスが悪くなり、転倒も起こしやすくなります。
またヒールを履いた女性においては、距骨が前傾してしまうことが多くみられ、その緊張によって足関節のクッション性が悪くなってしまい、足底筋膜炎を引き起こすリスクが高くなってしまいます。

さらに内側に傾いてしまうこともあり、外反母趾になりやすい傾向があります。
このように、足関節は歪みを生じさせることによって、さまざまな影響を引き起こしやすい関節であるといえ、現れている症状は距腿関節の歪みによるものかもしれません。

足関節モビライゼーションは、このように歪みに対して他動的な運動によって調整を行い、関節可動域を改善し、スムーズな動作に改善できることが期待できるものなのです。

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