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理学療法による筋膜リリースの治療方法~第二の骨格である筋膜の概念とは

筋膜リリースと理学療法

筋膜リリース』は近年、腰痛や肩こりなど痛みやコリなどの治療方法として注目されるようになりました。
そのキーワードは医師や施術者だけではなく、一般の方にまで浸透していることが知られています。

筋膜とは

治療法として広く認知されるようになった「筋膜リリース」。
診療をしていると「筋膜リリースを受けたい」と要望を受けることも多くなったのではないでしょうか。

筋膜の概念をしっかりと理解しておくことは、理学療法を行う施術者にとっては不可欠となっています。

筋膜は第二の骨格と呼ばれるようにもなり、痛みやコリの原因を考える上でその構造を知ることは、とても重要なものとなるからです。

私たちの筋肉は頭から足先まで、身体のどの部分の筋肉も筋膜に覆われています。

筋肉はその部位に作用して、パーツごとに役割を果たしていると考えがちですが、筋膜ですべて覆われているためにほかの筋肉にも作用していることが分かります。

例えば痛みやコリを感じる部位にはその原因はなく、まったく違う部位に原因があるということが珍しいことではありません。

一般的な医療では、痛みに対するアプローチが当たり前となっています。
「痛み治療」と呼ばれているものですが、これは「対処療法」に過ぎず原因を取り除くものではありません。

しかし筋膜の理解をすることによって、痛みのあるところに原因はない」と捉えることもでき、根本的な痛みやコリの治療に取り組むことができるのです。

筋膜リリースとは

筋膜リリースとは、筋膜が本来持っている柔軟性を取り戻すために、動きを改善させ筋肉や神経の動きを高める方法のことを言います。

痛みやコリの原因を探ってみると、その部位の筋肉にすべての原因があるのではなく、筋膜に原因があることが少なくありません。

筋膜は伸縮性のある薄い膜が何層にもなっており、その膜同士が滑りあって動いています。
筋肉や臓器、血管、神経などを覆い包んでいることによって、保護することができるのです。

しかし筋膜はとても柔らかいもので、縮まったり、筋膜同士でくっついてしまったりすることがあります。すると筋膜同士のすべりが悪くなり、痛みやコリの原因となってしまいます。

筋膜は血管や神経などを多い包んでいることから、動きが悪くなってしまうことによって、これらの循環障害を起こしてしまいます。これが痛みやコリの原因です。

本来ならば身体の動きに応じて形を上手く変えて動くようになっていますが、姿勢が悪かったり、無理な動作を続けてしまうことによって伸縮性が失われてしまうのです。

ただストレッチのように一方向に伸ばすようなものではなく、筋膜の方向に応じて施術を行うことが筋膜リリースの特徴であると言えるでしょう。

種類ある筋膜リリース

インターネットなどで『筋膜リリース』を調べてみると、大きく分けて2種類あることが分かります。

1つは「ハイドロリリース」と呼ばれることもある医師による痛み注射のこと。もう1つは理学療法士などによって行う施術のことを指しています。

いずれにおいても全身を覆う筋膜に対してアプローチする方法であり、その方法が注射によるものなのか、理学療法によるものなのかという違いになっています。

注射による方法は、診察によって痛みを探り、エコーによって炎症を起こしている部位を探し出し、筋膜と筋膜の間に薬液を注入し筋膜の癒着をはがしていくという方法です。

痛みやコリが強い場合には、1回の治療で10か所程度の注射を行う場合もあります。

理学療法による手技にて施術を行う場合においては、筋膜のよじれや縮みなどをほぐしていくことが重要になります。

筋膜は何層にもなっているものですが、浅い層の筋膜と深い層の筋膜ではよじれ方に差が生じています。
そのため特に身体全体を覆っている深い層の筋膜においては、その影響が全身に及ぶことも少なくないのです。

例えば足の痛みやコリの原因が上半身にあるということも珍しいことではないので、全身の筋膜リリースによって改善を目指していくことになります。

理学療法による筋膜リリースの治療方法

理学療法による筋膜リリースでは、身体の硬い部分、伸びにくい部分などをチェックしながら痛みやコリなどに対する原因となる部位を掴んでいきます。

筋膜は全身すべてを覆っているものですから、身体を三次元的に捉えてリリースさせていく施術が求められます。

つまりリリースとは単なるストレッチのようなものではなく、「解きほぐす」手技でなければならないということなのです。

筋膜は「浅筋膜」「深筋膜」「筋外膜」「筋周膜」「筋内膜」といったいくつもの膜が連続して層になっています。

これらが滑りあって動くことによって、筋肉を保護に、血管や神経、リンパの機能を維持させることができますが、よじれが起きると滑らかに滑らなくなってしまいます。

これはコラーゲン繊維とエラスチン繊維が一部でよじれてしまうことが原因です。よじれてしまうことによって、滑りが悪くなってさらにほどきにくくなってしまう悪循環に陥ってしまうのです。

理学療法による筋膜リリースでは、このような筋膜のよじれやねじれを解消させ、柔軟性や運動パフォーマンス、生活動作をスムーズに改善させることができます。

筋膜を解きほぐすために、痛みがでないように少しずつ施術を行います。

理学療法士など施術者自身がリラックスして手技を行うことによって、患者のよじれている筋膜が少しずつ溶け出すようにしてほぐれ、コラーゲン繊維とエラスチン繊維が本来の柔軟性を取り戻すことができるのです。

施術を行う際には、どのような施術であり、なぜこのような施術を行うのか説明することがとても重要になります。

患者自身が完全にリラックスすることができ、治療効果を発揮させることができるからです。

理学療法による筋膜リリースの効果

筋膜は、幅広い疾患や年齢層に適用することが可能です。

特に慢性的な痛みやコリだけではなく、急性の痛みに対しても改善を目指すことができます。
関節の可動域制限やスポーツ障害、コンディショニング、関節機能異常などをはじめとして、神経系機能異常や頭痛、循環障害などに対しても、効果を発揮できます。

筋膜のねじれやよじれ、歪みは身体的ストレスや精神的ストレスによって生じます。

日常的に姿勢が悪いような場合や、偏った動きをしているような場合などによって、生じやすくなります。

さまざまな原因や要因によって筋膜にねじれやよじれが生じ、筋肉に緊張を与え、関節に可動域を生じさせ、一定の部位に栄養障害を起こさせ、循環不全に陥らせてしまうのです。

理学療法による筋膜リリースによって、筋膜が持っている粘調度のバランスを整えることが可能です。
そのためねじれやよじれによる制限を解きほぐすことができるのです、

筋膜リリースでは、施術によって筋膜が持っている柔軟性を取り戻し、以前のように穏やかに伸長できるようにしていきます。

柔軟性を取り戻した筋膜は、以前のようにスムーズに動くようになります。
その動きによって血流が改善し、神経系の動きが活発になります。

そのため単に痛みやコリ、関節可動域制限が改善するというだけではなく、身体の一番良い状態を引き出すことができるために、免疫力の向上も期待できます。
身体自身がいい状態を覚えることによって、運動パフォーマンスを向上させることができるのです。

理学療法による筋膜リリースにおいて治療効果を高めるには、施術者自身が筋膜について正しい知識を持ち合わせておくことが大切です。

患者を触診していく中で、どのようなことが身体で起きているのか掴むことができるスキルと感覚を磨いていかねばなりません。

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