指関節のしくみ
手は私たちの生活にとってとても大切な部位であり、細かな動作や作業が行えるように、とても多くの関節によって構成されています。
そのため多くの骨が複雑に配置されていて、また腱やじん帯の支えによって、機能的に動かすことができるようになっています。
関節内においては弾力のある軟骨で覆われており、スムーズに動かすことや、衝撃に対して吸収する役割を持っています。
指の骨は、指の付け根部分にある「基節骨」、指の中間部分である「中節骨」、指の先端にある「末節骨」の3つの骨によって構成されています。
関節も3つ存在します。
拇指だけは骨は2つで構成されており、関節も2つとなっています。
指には腱鞘(けんしょう)と呼ばれる腱が指のサポートをしており、指の先端まで血液を供給するための動脈、指で感覚を感じるために神経が通っています。
このような複雑なつくりによって、触ったり、摘まんだり、擦ったり、挟んだりといった動作が可能となっています。
さまざまな動作に指は欠かすことができませんから、脱臼を引き起こしたり、骨折したりといったケガや損傷が生じやすい部位であるといえます。
特に「突き指」は球技などでよく起こしてしまうケガであり、安易に考えて引っ張る方も多いのですが、かえって脱臼や骨折、じん帯の損傷を引き起こしてしまうことがあります。
指関節の脱臼~指関節に多くみられる症状
指関節のケガと言えば「突き指」が最も馴染みのあるものですが、患者本人が考えるよりも症状の重い脱臼や骨折、腱断裂を引き起こしているような場合もあります。
またそれほど見られない部位の脱臼や、整復することが難しい部位もありますので、指関節においては幅広い知識が必要となっています。
突き指
指先にボールをぶつけてしまって、突き指をしてしまったという経験は、多くの人が持っているものではないでしょうか。
突き指で多くみられる関節は、第1関節(DIP関節)と第2関節(PIP関節)が多く、親指においては指の付け根部分であるMP関節となっています。
また手指だけではなく、足指においても突き指することがあります。
軽症の場合であれば、軽い打撲や捻挫しただけですから、安静にしておけば数日で痛みや腫れはなくなります。
湿布やアイシングのみで、症状を抑えることができます。
中等度の場合であれば、じん帯が部分的に損傷していることが多くなります。
痛みが強く生じており、腫れや内出血を伴うことも少なくありません。関節内に血が溜まっているようなこともあります。
適切な治療に取り組むことによって、2~3週間程度で回復させることができます。
重症のものであれば、脱臼を伴うもの、骨折を伴うもの、腱の断裂を伴うものなどがあります。
場合によっては、曲がったまま固定してしまうようなこともありますので、適切に治療することが必要となります。
腱の断裂がみられる場合には、腱によって関節のサポートができませんから、関節がとても不安定となっています。
そのままではすぐに脱臼してしまいますから、すぐに適切な治療が必要となります。
指関節の脱臼
指関節の脱臼は、突き指でもお伝えした通り、重症度の高い症状に位置づけることができます。
スポーツなどにおいて突き指をすると、関節が曲がって変形していることがみられますが、このような状況においては脱臼を伴っていることが少なくありません。
脱臼する部位で多いのは第2関節(PIP関節)となっており、「背側脱臼」と「掌側脱臼」に分けることができます。
この中でも多いものは「背側脱臼」であり、その場合には関節が背側に曲がっていることが分かります。
引っ張って整復しようとする方が多いのですが禁忌であり、適切な整復によって痛みや周辺組織の損傷を抑えることができます。
「掌側脱臼」は手掌側に脱臼している状態を指しており、腱との絡みもあり難しい整復が必要となります。
その他、親指にみられる「垂直脱臼」や「水平脱臼」も存在します。
こちらも整復には熟練の技術が必要となっています。
いずれの脱臼も入ればいいというものではなく、脱臼によっては整復が難しいものもありますので正しい整復術を要します。
指の骨折や腱断裂
指先に強い衝撃を与えてしまった場合や背側に曲がってしまうような力が加わった場合には、骨折してしまったり、腱が断裂してしまうことがあります。
槌指(マレットフィンガー)と呼ばれており、骨折を伴うものは骨性槌指と言います。
見た目には関節面が大きく歪んでいることが多く、腫れや痛み、内出血などを伴うことが少なくありません。
指先を伸ばすこともできなくなってしまいます。
このような場合には、損傷している部位を固定し、骨折している場合には手術が必要となることもあります。
腱が断裂している場合では、適切に整復し、正しく処置をすることによって、元通りの関節へと改善させることが可能です。
指脱臼の整復方法
突き指は指のケガで最も多いものですが、脱臼を伴うものがとても多くなっています。
骨折を伴わない脱臼の場合においても、多くはじん帯や関節包などを損傷している場合がほとんどで、断裂していることも少なくありません。
また亜脱臼であるとしても、じん帯や関節包などが部分的に断裂している場合もありますので、手技による整復によって関節の歪みを適切な位置に戻していく必要があります。
指の第2関節(PIP関節)の背側脱臼の場合、手技によって比較的容易に整復することができます。
ただし先ほどもお伝えしている通り、親指の垂直脱臼や水平脱臼の場合では、かなり難しい整復になります。
手技の整復において注意しなければならない点は、それほど外見に変形が見られない状態のものです。
場合によってはそれほど腫れや痛みが生じないこともあり、見逃してしまうようなものもあります。
それでも指関節が動かすことができませんので、脱臼を疑う場合には適切な診断によって整復することが必要となります。
足指脱臼
足の指が脱臼してしまうこともあります。
例えば素足で自宅内で歩いているような状況で、柱の角に小指をぶつけてしまうような場合には、MTP関節に脱臼を引き起こしてしまうことがあります。
このような場合、外見においては外側に開いているような状態となっています。
脱臼の多い部位は第5趾のMTP関節脱臼となっていますが、PIP関節脱臼がみられる場合もあります。
指が何かに引っ掛かり、そのまま背側に強い力を加えたような場合に引き起こされてしまいます。
足指脱臼も手指同様に整復することができますが、それほど症例が多くない部位の脱臼がみられることも稀にあります。
そのため幅広い視野で、しかも深い知識を持って施術を行うことが必要となります。